8月のおはなし ~写経のチカラ~

 最近、お写経がブームなのでしょうか。お写経をしたいのですがとの問い合わせが続きました。寛永寺では毎月第3土曜日に「開山堂(両大師)」において写経会を行っています。お写経をして心が静まったといったお話を聞くと、こちらもうれしくなります。

ところで「お写経そのものの意味は?」と聞かれたら、何て答えますか?

 今から2500年前のことです。お釈迦さまがまもなく亡くなる(「涅槃に入る」とも言います)ときに、多くのお弟子さんたちはお釈迦さまの教えを今後どのように伝えたらよいか、とても不安に思いました。『法華経』によれば、そのときにお釈迦さまは教えの伝え方を指示したのです。そのなかに「お写経をする」とあり、弟子たちは安心したのでした。

 このお経を元に、天台宗を開かれた天台大師智顗さまは「お釈迦さまの教えの伝え方」について、次のように解釈しました。

「お釈迦さまの教え」は教え自身で伝わるわけではない。それを通じるようにするのは人なのであり、教えを伝える人を「法師」と言うのである。(『法華文句』)

「法師」というとどうしても「お坊さん」と感じてしまいますが、天台大師によると仏さまの教えを伝える人はすべて「法師」なのです。つまりお写経はまさに「法師」の行いであり、仏さまの教えを広めていることに他ならないのです。


※開山堂にある法華塔。ここに『法華経』が納められていると言われています。
※今月の開山堂写経会は8月19日(土)午後2時から、予約不要です。