♪来ました来ました楽しいお盆 迎え火焚いて ののさまを
みんなでお迎え致しましょう 年に一度の たままつり
境内の幼稚園から元気な歌声が聞こえてきます。「お盆」は一般的には7月13日夕方から16日までとされ、寛永寺ではその前日である7月12日に法要を行います。そこで今回のお話は、お盆の源流とされる『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』というお経のご紹介です。主人公は、お釈迦さまの数あるお弟子さんのなかで神通(じんづう)第一とうたわれる「目連(もくれん)」尊者です。
お経は、目連尊者が両親の恩に報いようと思い、神通力をもって世の中のありさまをみつめているところから始まります。すると、なんと亡くなった自分の母親が餓鬼道に堕ちて、全身骨と皮になって痩せ衰え、見るからに哀れな姿になっているのを見てしまいました。驚いた目連尊者は、神通力のスペシャリストとしてさっそくご飯を鉢に盛り、母親の所に届けました。ところが、ご飯が突然燃えて炭になってしまい、母親は食べることができなかったのです。
目連尊者は大声で泣き悲しみ、救いをお釈迦さまに求めました。そこでお釈迦さまは、目連尊者1人の力ではなんともできないが、7月15日は大勢の僧が一堂に集まっているので、僧侶たちに供養して回向(えこう)を頼めば母親が救われることを説いたのです。こうして初の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が営まれ、母親だけでなくその功徳によってあらゆる飢え乾いた餓鬼が苦しみより離れ救われました、という内容です。
一件落着したところで、最後にお釈迦さまは次のようにお経を結びます。
毎年7月15日に孝順のために盂蘭盆の供養をささげれば、現在の生みの父母、過去七世の父母にその功徳は及ぶ。だから盂蘭盆会を大切にしなさい。 (『盂蘭盆経』)
お盆にご先祖さまを供養することはわたしたちにとって「いつものこと」「当たり前」かもしれませんが、盂蘭盆会の法要を営むことは、実はお釈迦さまの教えをご自身で実践していることに他ならないのです。
7月のおはなし ~お盆の始まり~