自粛期間中に買って途中になっていたクロスワードパズルを年内に解こうとしたところ、¨お¨から始まる三文字の言葉の設問があり「お坊さんに支払うお金」というヒントがついていました。
答えは「おふせ(=お布施)」だったのですが、おやおや、私の認識している布施とは少し意味が違うようですので、念の為に辞書で調べることにしました。
角川の大字源には
「布施」
一・人に物を与える。
二・(仏)①財を施して貧者を救う。②法を説いて人を済度する。③人を困難から救う。④僧に金品を与える。また、その金品。
とあります。なるほどこの④がヒントの根拠になっていたのでしょう、納得です。
次に私の認識している仏教、天台宗の教えにおける「布施」については以下の通りです。
布施とは悟りに至る為に行うべき実践行である¨六波羅蜜¨の一つであり、布施の「布」は¨広く¨や¨分け隔てなく¨の意味で、「施」は¨ほどこし¨ですので、差別せずあまねく人に施しをすることとなります。
また布施には種類があり
喜捨(きしゃ)とも言い、僧侶に対して自ら進んで財産を施す「財施」
財施を受けた僧侶がそれに報いる為に仏法を説き安心を施す「法施」
善因善果とも言い、他者への善行はやがて自らにも巡り来て果報を獲得する「無財の七施」
とされています。
そしてこの「無財の七施」は名前の通り
1:眼 施:優しい眼差しをあらゆるいのちに向けること。目は口ほどにものを言います
2:和顔施:穏やかな表情で相手に接すること。笑顔は最高のコミュニケーションです
3:愛語施:思いやりのある言葉を投げかけること。感謝や労いの気持ちを言葉で表します
4:身 施:身体を使って奉仕すること。自分がされたら嬉しい事を他者にも行います
5:心 施:人の気持ちを理解すること。共感力だけでなく自他の差異を認めることも大切
6:床座施:席や場所を譲ること。自分さえ良ければではない、独り占めしない譲り合いの心
7:房舎施:(ぼうしゃせ)と読み、自分の家に招き接待すること。おもてなしの心です
の七つに分かれており、財に頼らず行える布施なのです。
近年、財施のみを布施という言葉の意味として捉えがちですが、それは一面に過ぎません。
特に無財の七施は僧侶に対してだけでなく、仏教徒同士が互いに実践を心がけるべき行いであり、こころ豊かな暮らしをする為の指針です。
いきなり全部を実践するのは難しいかも知れませんが、まずは今日一日「和顔施」で過ごしてみよう!なんていかがでしょうか?
東叡山寛永寺 教化部