2月のおはなし ~「鬼は外」が禁句の豆まき~

「鬼は外!福は内!」境内の幼稚園から、大きな声が聞こえてくる季節になりました。後片付けが大変だなと思いながらも、たくさん豆をまかないとやはり気分が出ないものです。ところで「鬼」は恐ろしい存在と思ってしまいますが、屋根の一等地に「鬼瓦」を置いて魔除けにしたりします。すると「鬼」とはそもそもどのような存在なのでしょうか。

宮中行事の追儺式が変化した節分の豆まきでは、鬼に向けて豆をまいて厄除けをすることから「鬼は悪者」と考えてしまいますが、実は古来より「鬼は悪者を防ぐ門番」という、まったく反対の考えがあったのです。特に寛永寺は江戸を守護するために「鬼門(北東の方角)」に建立されています。つまり文字通りに「鬼門で門番」をしているのが「鬼」なのです。

鬼が!?と驚かれたかもしれません。ところが当山の開山堂に祀られる平安時代の僧侶・慈恵大師良源大僧正は、大変に霊力があったことから時代が下っても厄除け元三大師として広く信仰され、なんとその姿が鬼となって魔除けをする「鬼大師」としても祀られるようになったのです。こうしたことから、開山堂の豆まきは「福は内!」のみで、「鬼は外」を言わないのが大きな特徴です。つまり鬼大師として尊敬されたり、門番であったりといった鬼を退治してしまうわけにはいかないと考えられたことで、「鬼は外」を言わないのだと伝えられています。

ちなみに方角(四方と八方)に十二支を当てはめると、鬼門の方角のことを「艮(うしとら)」と言います。これが転じて、ウシのツノにトラのパンツが「鬼の姿」の典型になったとも言われています。

寛永寺教化部


開山堂で毎月三日の縁日に開帳される元三慈恵大師良源大僧正の御影。天海大僧正も深く信仰されました。